さつまいもって蒸したりするよりも焼き芋のほうが甘くて美味しいですよね。これはワタクシが焼き芋好きなのもありますが、一般的にもそんなイメージかと思います。特に甘~くて美味しい焼き芋はネットリとして甘い蜜でしっとりしてますよね。
美味しい焼き芋には、元々糖度が高くて焼き芋に向いている安納芋や紅はるかのような品種が使われている事も有りますが、普通のさつまいもでも焼き芋にする事で他の調理方法よりも甘~く頂けちゃいます!
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焼き芋が甘い理由
実際、生のさつまいもはあまり甘くありません。最近は安納芋もたいていのスーパーで売っていますが、買って生でかじっても美味しいも のではありません。(好きな人も居たらごめんなさい・・・) なぜ焼き芋にするとあんなに甘くなるのかというと・・・
ベータ・アミラーゼ
焼き芋のもとになるさつまいものの主な成分はデンプンです。このデンプンは単糖の分子が沢山結合した『多糖類』というものであり、デンプン自体は甘くはありません。ですが、さつまいもには「ベータ・アミラーゼ」という消化酵素も含んでいます。
アミラーゼ・・・理科か生物か・・・昔に授業で習った気がしませんか?唾液に含まれていて、ご飯等のデンプンを甘くするアミラーゼです。2016年夏の大ヒット映画「君の名は。」に出てきた口噛み酒もこのアミラーゼの力でご飯を甘くしたものを発酵させたものです。
唾液に含まれているのは、アルファ・アミラーゼというアミラーゼですが、さつまいもに含まれているベータ・アミラーゼも同じような働きをします。
ご飯が唾液で甘くなるように、さつまいものデンプンがベータアミラーゼという酵素で糖化し、甘くなるので す。(細かく言えば少し違うのですが、糖を生成するという点で、「同じような」と表記させて頂きました。) そして、ベータアミラーゼが活性化する為には加熱する必要があるのです。ですので生のさつまいもはあまり甘くなく焼き芋にすると甘くなるのです。
ちなみにですが、安納芋は一般的なさつまいもに比べてデンプンを多く含んでいます。元々の高い糖度に加え、糖化の元になるデンプンが多いので安納芋の焼き芋は一般的なさつまいもの焼き芋よりも甘くなっているのです。 また、紅はるかは元々の糖度が相当高いようです。甘い焼き芋と言われている品種でも、品種によって甘い理由が違うというのも焼き芋ならではですね。
加熱温度
焼き芋があんなに甘くなるには大切な条件があります。
それは温度。
唾液のアルファアミラーゼが体温前後の温度帯で活発に働くように、消化酵素は活性化する温度帯があります。さつまいものベータ・アミラーゼも同様です。
例えば、収穫後のさつまいも は上手く保管しておくと「追熟」と言ってだんだんと甘くなっていきます。これは、ベータ・アミラーゼがデンプンを糖化してくれているからなのですが、活発に働く温度帯ではないため、数ヶ月単位の時間がかかります。
ベータ・アミラーゼが活発に働いてくれる温度は40~70度くらいですので、55度前後の低温でじっくり焼き上げる必要があるのです。そうやって、さつまいもの甘さを最大 限に引き出す事が出来ます。
ちなみにですが、温度が高すぎるとベータ・アミラーゼの活動が止まってしまうので、甘くなりません。 電子レンジで普通に暖めたさつまいもがあまり美味しくないのは、短時間の高温調理 となる為です。
※この時は失敗しましたが、ちゃんとやれば電子レンジでも、美味しく焼き芋を仕上げる事もできるみたいです。うまくいったらまた別記事でご案内したいと思います。
加熱時間
消化酵素の分解は一瞬ではなく時間をかけてじっくりと分解していきます。その為、焼き芋が甘くなるのには時間がかかります。
また、ベータ・アミラーゼが活性する温度に保っていたらドンドンと甘くなってくれるわけではありません。実は10分以上経つと糖度にあまり変化がなくなります。でも、焼き芋の作り方を見ると、もっと時間かけて焼くように書いてあるj事がほとんどだったりします。
糖度にはあまり変化がありませんが、焼き時間をかけるほど甘くなるとも言われています。実は甘さが増すにはもう1つ理由があります。その甘くなる理由というのは・・・
水分を飛ばす事!
同じ量の糖分なら水分が少ない(濃い)方が甘いという理由です。
3つの理由
つまり、焼き芋が甘いのは・・・
- さつま芋のデンプンを糖分に変える。
- 酵素が一番活性化する温度をキープする。
- じっくり加熱する事で水分を飛ばし甘みを凝縮させる。
この3つの理由のおかげだったんです!
つまり、石焼き芋は比較的温度管理も楽な熱くなった石で最適な温度をさつま芋にじっくり伝えて加熱する事が出来るので美味しくなるという訳です!
昔の人はよくこの調理方法にたどり着いたと感心しちゃいますね!